2012年04月27日

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写真はピンズマルシェのピンバッジ、スペイン・バルセロナ五輪のキャラクター、コビ。
アドレスはこちら↓
http://masson.ne.jp?pins=69688








その日、私はスペインに着いたばかりでした。

大学院の夏休み中で、アルバイトを2週間ほど休み、旅行していました。
旅の目的地はスペインでしたが、格安航空券の価格はパリ行きの方がずっと安かったので、パリから徐々にスペインへ下る旅行計画を実行中でした。

8月のヨーロッパが寒いこともあるとは知らず、サンダル履きで日本を出ており、パリからボルドーまで南下したところで、いつまでも続く寒さに耐え切れなくなってスニーカーを買いました。

そのうち暑くなるだろうと期待していたのですが、そんなに甘くはありませんでした。


スペインの北部バスク地方にあるビルバオに到着した日は、小雨が降ったり止んだりしていて、やはり肌寒く、チノパンにスニーカーを履き、Tシャツに厚めの黒いウインドブレーカーを着て、前のジッパーを上まで引き上げ、ビルバオで長距離バスから降りたときには、雨をよけるためにフードもかぶりました。

大きなリュックを背負って、すぐにバス停の近くにあった観光案内所に向かい、
街のホテルの案内地図をもらいました。

このとき私はフランス語が全くの初学者で、スペイン語の方はある程度話せましたから、フランスからスペインに入って、話が通じるようになってほっとしたことを覚えています。

ビルバオの観光の中心地は旧市街にあって、
地図の上でもホテルの印はそこに集中していたので、
市内バスに乗り換えて旧市街の近くで降りました。

(ビルバオの写真 モダンな新市街の方)
bilbao-view1a


bilbao-view1b


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バスの停留所から一番近いホテルへ歩いていき、
呼び鈴を鳴らして部屋はないかと尋ねました。
リュックが重かったので、一刻も早く下ろしてしまいたかったのですが、
インターフォン越しに満室だと言われてしまいました。

そんな返事がかえってくることは全く予期していませんでした。
それほど有名な観光地だとは思えませんし、
地図でみると小さなホテルは結構いくつもあります。

けれども、空室がないものはないのですから仕方ありません。
気を取り直して、そこから近いホテルを目指して歩き出しました。

ところがその次もまたその次も満室なのです。

そのうち道が狭くなり、両側に石造りの一層古い建物の立ち並ぶ旧市街に入りました。観光客はここの方が多いと予想され、ますます空き室の見つかる見込みは薄そうでしたが、それでも尋ねてみないとはじまりません。端から一つずつ、ホテルのベルを鳴らしていきました。

(旧市街)
Bilbao 2003-22


Casco-Viejo-Bilbao-300x224


しかしやはりどこも一杯です。雨のせいか路上には他に行き交う人もほとんどいなかったのですが。
ときにはベルの上に「満室」のメモが貼り付けられていることもありました。
肩に荷物が食い込んできて、これ以上ホテルを回っても意味がないような気がしてきて、どうしたものかと考えながらも、とりあえず歩き続けました。

そのときに歩いていた古い石畳の道を、反対方向から同じ観光案内所の地図を手にして歩いてきたのがディディエです。

私と同じようにリュックを背負い、
トレーナーにナイロンの登山用のズポンを履いていて、
目が合った瞬間、お互いに相手がホテル探しに苦労している旅行者だということを悟りました。

苦笑いしつつ地図を見せ合い、英語で話しながら、どのホテルをチェックしたのか情報交換です。地図に付けた印によると、私は旧市街を左回りに進んで町の中心に入ってきて、ディディエの方は右回りをしています。

お互いこの先にまっすぐ進んでいっても無駄だということがわかり、
それじゃあ、ディディエは旧市街の内側へ向かってみるといい、
私は外側を試してみるといって別れました。

私はそのまま道を先に進んで一番初めの角を外側に曲がりました。ディディエの方は、私の歩いてきた方向に少し進んで、そこから内側に曲がるのだろうと思っていました。

ところが、私が外側へ向かってしばらく行った曲がり角のところで、並行したひとつ向こうの筋を歩くディディエの姿がちらっと見えたのです。

内側へ行くと話していたのに、外側へ向かっており、しかもその通りをどこまでも進んだところで、地図上にはホテルはひとつもありません。道を間違えているのがすぐにわかりました。

ただでさえお互い重い荷物を背負っているのに、道に迷ったりしたら更に辛さが倍増です。気の毒になって、ちょっと面倒ですが追いかけて行って道を教えてあげることにしました。

次の曲がり角まで急いで走って、ディディエの歩く並行する道路に向かって曲がり、ディディエが姿を現すのを待って、「エクスキューズミー!」と言いながら一生懸命、手を振って合図をしました。

ディディエの方では自分が道に迷っている自覚がありませんから、また私を見つけてびっくりしながらもニコニコ笑って立ち止まりました。私は息を切らしながらディディエの側まで行き、地図を見せながらどう道を間違っているのか説明しましたが、わかったのかわかっていないのか。
ともかく私はまたこっちへ行くけど、あなたの行き先はあっちだからとはっきり指し示したにも関わらず、私が歩き出すと後を付いて来て・・・

そして、それからずっと付いて来てるんですよね、ディディエは。もうそろそろ10年も。


(02:03)

この記事へのコメント

1. Posted by bushclover   2012年04月27日 12:07
お久しぶりです
ずっとBLOGは見ていたんですが コメントはフランス旅行のアドバイスを頂いて以来です。
ディディエとの出逢いのお話・・・全然知りませんでした
フランスで出逢ったものとばかり思ってましたら・・・
京都の話でディディエの方向お〇ちネタが この話の布石だったとは・・・・さすが
(違います?!)

でもディディエはこれで一生幸せな迷い人になったというわけですね! ハイ!!ごちそうさまですっ
2. Posted by まなみ   2012年04月27日 17:02
そうやってふたりは出会ったんだね(^^♪

体調はいかが?
3. Posted by yama   2012年04月28日 08:55
なるほど そういう出会いだったのですね

後から考えるといろいろな偶然が繋がった訳ですね♪♪

なんだか 素敵なお話でした!   

もう少しだから 体調に気をつけて 今の状況楽しんでくださいね  

4. Posted by 亜矢子   2012年05月16日 01:16
>bushcloverのSちゃん

ディディエの幸せは、その後それほど長くは続かなかったんです。なかなかそうは問屋が卸しません。迷いっぱなし???


>まなみちゃん

体調は大いに波があって、予測不可能です^^;
悪いわけではないけど、寝てばかり。
なんかもう必要最低限のことしかできないよ。
胎教のためにお腹に話しかけた方がいいとかいうけれど、そうしかけるとすぐに寝てしまう・・・


>yamaさん

この世は不思議な偶然に満ち満ちていますね~。

妊娠期間もあと残り1ヶ月ほどになりましたが、
楽しむというより、ひたすら寝てるという感じで・・・
やっぱり早く普通に外へ出られるようになりたいですね。

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