2016年04月20日

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フランスから持ってきた、お下がりのレゴ鉄道
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お昼ごはんの後にアイスクリームはもう食べたのに、晩ごはんの後も食べたいと言い出して、いくら「駄目」と言ってもきかない。何にも言わなくなって大人しくりんごを手に取って口に運びだしたから、やっと諦めたと思ったら、りんごがなくなるとすぐに冷凍庫の方へとことこ歩いていって、自分でアイスクリームを取り出した。うちの冷凍庫は、冷蔵庫の下にあるタイプなので、ルイでも開けられる高さにある。

「駄目って言ったでしょう!」とルイが食べ始める前に手から引ったくってまたアイスクリームを冷凍庫に仕舞うと、ルイは大声で泣き始めた。
「2個食べる!2個食べる!」
「駄目、一日1個」

今思うと、力づくでルイの手からいとも簡単に取り上げたのがよくなかったかもしれない。説得して自分で冷凍庫へ入れるように導くべきだったのかもしれない。アイスクリームが溶け出すことの心配などしないで。

ルイは、すっかり腹を立てて、拳を握りしめ私を叩き始めた。
「2個食べる!2個食べる!」
それもまた手首を握りしめて止めさせると、ルイの部屋へそのまま引きずっていった。電気の付いていない廊下を通って真っ暗な部屋にルイを入れて、「そこにいなさい」と戸を閉めようとしたけれど、ルイは泣きながら暴れて手を振りほどき、私の脇を抜け部屋から出てしまった。もうお兄ちゃんになってしまって、簡単には閉じ込められない。今度はルイの方が私を部屋に押し入れて、「ママが出て来られないの。ママがお部屋に入るの」と出口を塞ごうとする。
「ママを閉じ込めたいの?」
「うん」と涙をボロボロ流しながら返事する。

頭ごなしにしても無駄だと、私もやっと悟って「ママはいじわるで食べちゃ駄目って言ってるんじゃないよ」と静かに話しかけた。
「ママ、いじわる!」と涙目のままルイが私を睨みつける。
「違うよ。アイスクリームを1日で2個も食べたら、体も冷えるし、歯にも良くないし、それに他のものを食べられなくなるでしょう?お菓子ばっかり食べてたら、ルイは病気になってしまうよ?だから駄目だって言ってるの。アメちゃんとかチョコレート少しだったら食べていいって言ってるでしょう?いじわるじゃないよ」
「ママ、いじわるなの!ママ、いらない!もうママ、いらない!」
「わかった。ママがいなくてもいいんやね?」
ルイは頷いた。
「仕方ない。ママ、出て行くわ」

私は足音も立てずに、そうっと歩いて玄関へ行って、なるべくカチッともいわないように鍵を開けて、外に出た。春だから、夜でももうそんなに寒くなくて助かった。お金も何も持ってないし、さてどうするか、しばらく考えないと。まずはマンションの階段に腰掛けて、何か解決策を思い付くのを待ってみることにした。そのまま10分ぐらい経過したところで、私の座る場所からは見えないけれど、玄関のドアを押し開ける音が聞こえてきた。それからカサカサカサと小さな足音がして、ルイが顔を出した。私がそんなところに座っているとは思っていなくて、びっくりした顔をしたあと、すぐに口元に笑みが広がった。追い出した手前、大喜びはできないけれど、ママを見つけて、嬉しさを隠し切れないという笑顔だった。

「アイスクリーム、食べたの?」と聞くと、首を横に振った。
「ママ、お家に入っていいの?」今度は縦に。私は立ち上がって、ルイと一緒に玄関まで戻った。ルイはまだ玄関の戸を押すことはできても引いて開けられないので、私を見上げてどうぞという仕草をする。さっきから一言も話さない。でも目はとても嬉しそうだ。私が戸を引いて先に家の中へ入ると、やっと安心して喋り始めた。

それから、ルイはチョコレートをちょっとだけ欲しいといって、ほんの少しだけ食べた。


10分間、薄暗い廊下にいてルイは一人で何を考えていたのかな?いろんな複雑な感情を表して、理解するようになっている。また一段階、ルイとの暮らしが深みを増したような気がした。


(01:06)

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